片割れが死んだ。
あいつは私だったものだ。あいつも私だったのだ。
あいつと私は同じ体を元にして作られた手足のように密接し離反し得ない関係。あいつは私の名も知らず、私はあいつの名も知らず。
けれども意識はあった。
われわれは一つのものになりたがっていたという意識。
あいつは唯一の成功例として、命をもち意識を持ち、ただの器だった人形の体で人間になったのに、失敗例である私のほうが、正確に言えば私だったものの中に入った闇皇という超自然的な存在のほうに、価値があったために、唯一の成功例だったあいつは闇に葬られ、超自然的な存在に同化され吸収され意識さえも混在して最早かつての私ではなくなった私はこの世界に存在すると証明を受けたのだった。
片割れは私の命を狙っていた。CRONUSの老党たちを、嬲って切り裂いて刻んで肉塊にしたあいつは、望み続けた世界に放たれてから、私を狙っていた。私を探して殺してその肉を食って、私と一つのものになるために。
意識は闇皇の中に沈下してはいたものの、在り続けていた。
私は吸収されて同化されたのだけれど、まったくすべてが持っていかれたのではなくただ二つのものが一括りになっただけであって、依然二つであり、私も存在していたということだ。私はいた。
名も知らない片割れが私を殺しに来ることがわかってから、せめてと私が思ったのは、私の手で殺してやろうということ。
片割れはきょうだいのようなものだ。私たちは手足だった。一枚の掌に生え、隣り合った指のように離れられないものだった。
だから、殺してやろうと思っていた。
なのに、私が叫んでいるのか、闇皇が叫んでいるのか、それともあいつが叫んでいたのか。
体の奥から何かが叫ぶ。狂おしく、苦しい。体の一部がなくなってしまったようなどうしようもない喪失感。身体が熱く、芯から冷え切って、泣き叫んだ。それが声になっていたのか、わからない。
思うことはただ一つ。
私が殺してやろうと思ったのに。
暗転。
闇皇が意識を放れたのがわかった。
叫んでいた何かがふっと消えて、私の体は違うものに換わって、それまで感じていたような激情は影を残さず消えていた。
暗転。
「asuka」:実験体_blank 意味は欠番
あいつには最初から最後まで何も与えられなかったらしい。
2008.02.02 01:49 | 「asuka」 |
トラックバック(-) | コメント(-) |




